社交不安障害ってどんな病気?
結婚式の挨拶や大勢の人の前でのスピーチが苦手で不安を感じる。初対面の人に挨拶するのが恥ずかしい。など、日常誰もが経験することです。ところがこのような状況を恐れるのが社交不安障害(SAD)です。
社交不安障害は人と話をしたり、人前で行動したりする社会的状況で強い不安や人に変に思われるのではないか、恥をかくのではないかと心配し恐れることを特徴とする病態です。
- 見知らぬ人や少し顔見知りの人との挨拶や会話
- 人前での発言・スピーチ
- 社会的立場が上の人との会話
- 会社で電話をとる
- 受付で手続きをとる
- 人前で文字を書く
- 人前で食事をする
- 会食やパーティーに参加する
このような状況で社交不安障害には、さまざまな症状が身体に現れます。
強い不安を感じる、強い緊張を感じる、頭が真っ白になり何も答えられない、声が震える、声が出ない、手足の震え、めまい、動悸、口が渇く、赤面する、汗が出る、吐き気がする、胃のむかつき等の症状があり、こうした強い不安を避けるため、また人に知られたくないと考えるあまり社交不安障害は周囲の人々との接触や、人前での活動を避けるようになり、日常生活に支障をきたすことになります。
症状が慢性化してしまうと、うつ病やパニック障害なども併発するおそれがあります。症状はパニック障害と似ていますがパニック障害が「死」や「精神的におかしくなってしまうこと」に対する強い不安であり発作的に症状があらわれるのに対し、社交不安障害では「人」や「社交場面」に対する強い不安があらわれます。「自殺を考えたことがある」人の割合はうつ病の人よりも多く、実際周囲の人が思っている以上に悩んでいる方が多くいらっしゃいます。
生涯有病率は3 ~ 13%と言われており決して稀な病気ではありません。5歳以下など世代を問わず発症しますが、特に15歳頃の思春期に多く、不安障害の中で最も発病年齢の低い病気と言われています。その一方、30 ~40代あたりに管理職につき、人前で話す機会が多くなり発症するといったケースもめずらしくありません。
社交不安障害の治療には薬物療法と認知行動療法があります。
薬物療法と認知行動療法で症状を安定させていき恐怖や不安を取りのぞき本来その人の持つ自己治癒力や自然回復力を高め少しずつ障害に対する恐怖感をとりのぞいていきます。苦手とすることを少しずつ段階を踏んで克服できるように薬物治療、認知行動療法を根気よく続けることが大切です。当院でも多くの治療実績を有し、50歳代や60歳代で受診される方もおられ、症状から解放された時になぜもっと早く受診しなかったのかと悔やまれる方も多くみられます。