NHKの2月22日に放送された「ためしてガッテン~デルタパワーの謎」の放映内容が物議をかもし、翌週の放送日には謝罪と訂正がなされるという異例の事態となった。たまたま両方の番組をみていた。確かに「不眠症」の効能しか得ていない「ベルソムラ」という睡眠薬にあたかも血糖値を下げる作用があるかのような誤解を招く内容であった。当院でも、番組を見た2名の糖尿病を併発したうつ病の方が服用していた睡眠薬を「ベルソムラ」に変更して欲しいと要望された。まぁ この場合は睡眠導入剤服用中の方であったからまだ問題はないと言えるでしょう。不眠症状のない方が血糖値を下げるためにこの薬を服用することには大いに問題がある。番組には一人の糖尿病の男性が「睡眠には普段から全く問題はない・・・」とのことで脳波検査をしたら熟睡時に生じる脳波上のデルタ波が乏しいとの結果であった。糖尿病の方は一般の2倍の不眠症罹患率にあり、自覚は無くても糖尿病の人は熟睡度が乏しい傾向にあるらしい。従って熟睡の目安である脳波上のデルタ波も当然少なくなる。ベルソムラは睡眠の熟睡度を高める・・・すなわちデルタ波を増やす作用がある。熟睡が得られれば睡眠中の交感神経の活動が低く抑えられ、結果として血糖値を上げるコルチゾールやグルカゴンなどのホルモン分泌も抑制され血糖値が下がることにつながる。脳波にはアルファ波、ベータ波、シータ波、デルタ波などがあり睡眠深度で最も深い睡眠ステージⅣの時にデルタ波が出現する。従来の睡眠導入剤とは全く作用機序が異なるベルソムラには既存の睡眠導入剤にはない多くの利点があることは確かなようだ。熟睡がえられるだけでなく、ふらつきや前向性健忘、抑制欠如した言動や服薬後の食行動、依存習慣性などがみられないという。日本人が世界に先駆けて開発し、発売に至った(2015年11月発売)この薬は脳幹部の意識に関連するオレキシンという物質に作用する。(オレキシン受容体拮抗薬)オレキシン受容体は”別腹受容体”とも言われ、満腹でも食後のスイーツは食べられることは誰もが経験済でしょうが、そこにはオレキシンが関係しているという。別にベルソムラの製薬会社から依頼されている訳でもないが、確かにこれまでの睡眠導入剤にはない魅力がある薬と言えそうであり、現に私も時折服用して効果を実感している。ただし効果には個人差があることも日頃処方している中での実感である。